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十一月十六日 土曜日③ 前進

Author: ドラドラ
last update publish date: 2026-05-17 17:05:56

 会場を出たあとのことを、正直に言えば――よく覚えていない。

 照宮さんと別れの挨拶をして、軽く会釈を交わして、それから……どうしたのか。

 頭では理解しているはずなのに、記憶としては途切れ途切れだ。

 気づけば、俺は街を歩いていた。

 夜の空気は冷えていて、隙間から入り込む風が、現実に引き戻すはずなのに、足取りはどこか地に着いていなかった。

 ネオンの光も、行き交う人の声も、すべてが遠い。

 駅まで、どうやって辿り着いたのかも曖昧だ。

 改札を抜けた記憶はある。電車に乗った覚えも、かすかに残っている。

 吊り革を握っていたはずなのに、車内の風景も、人の顔も、まるで霧がかかったみたいにぼんやりしていた。

 誰かに肩が触れた感触すら、後になって思い出したくらいだ。

 頭の中に浮かんでくるのは、断片的な光景ばかりだった。

 差し出されたハンカチ。白くて、清潔で、少しだけ柔らかかった感触。

 穏やかな声。 「
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